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『ヨーガ・ヴァーシシュタ』離欲篇の冒頭では、まず、あらゆる存在の源であり帰着点でもある真実なる自己へ礼拝が捧げられます。続いて、解脱に至るには行為と知識のどちらが必要なのかという問いが示されます。聖者アガスティの答えは明快です。鳥が二つの翼で空を飛ぶように、最高の境地へ至るには知識と行為の両方が必要だと説きます。
原著について
原題は Yogavāsiṣṭha(ヨーガ・ヴァーシシュタ)。サンスクリットで伝えられてきたインドの哲学的文献です。
第1章 序論
第1節 神への礼拝
1
यतः सर्वाणि भूतानि प्रतिभान्ति स्थितानि च ।
यत्रैवोपशमं यान्ति तस्मै सत्यात्मने नमः ॥ १ ॥
すべての存在がそこから現れ、そこにおいて存立し、まさにそこへと静まっていく、その真実なる自己に礼拝。
2
ज्ञाता ज्ञानं तथा ज्ञेयं द्रष्टा दर्शनदृश्यभूः ।
कर्ता हेतुः क्रिया यस्मात्तस्मै ज्ञप्त्यात्मने नमः ॥ २ ॥
知る者、知識、知られるもの、見る者、見る働き、見られるもの、行為者、原因、行為――それらがそこからある、その認識を本性とするものに礼拝。
3
स्फुरन्ति सीकरा यस्मादानन्दस्याम्बरेऽवनौ ।
सर्वेषां जीवनं तस्मै ब्रह्मानन्दात्मने नमः ॥ ३ ॥
天と地において歓喜のしずくがそこからきらめき出る、すべてのものの生命である、そのブラフマンの歓喜を本性とするものに礼拝。
第2節 スティークシュナの物語
4
सुतीक्ष्णो ब्राह्मणः कश्चित्संशयाकृष्टमानसः ।
अगस्तेराश्रमं गत्वा मुनिं पप्रच्छ सादरम् ॥ ४ ॥
あるバラモン、スティークシュナは、疑念に心を惹きつけられて、アガスティの庵へ行き、恭しく聖者に尋ねた。
5
सुतीक्ष्ण उवाच ।
भगवन्धर्मतत्त्वज्ञ सर्वशास्त्रविनिश्चित ।
संशयोऽस्ति महानेकस्त्वमेतं कृपया वद ॥ ५ ॥
「尊者よ、法の本質を知り、すべての聖典を確かめ尽くした方よ。私は大きな疑念を抱いています。どうか慈悲深く、これをお答えください。
6
मोक्षस्य कारणं कर्म ज्ञानं वा मोक्षसाधनम् ।
उभयं वा विनिश्चित्य एकं कथय कारणम् ॥ ६ ॥
解脱の原因は行為なのか、あるいは知識が解脱の手段なのか、それとも両方なのか。どれが原因なのかを確定して、お答えください。」
7
अगस्तिरुवाच ।
उभाभ्यामेव पक्षाभ्यां यथा खे पक्षिणां गतिः ।
तथैव ज्ञानकर्मभ्यां जायते परमं पदम् ॥ ७ ॥
アガスティは言った。
「鳥の空中の飛翔が両方の翼によって成り立つように、まさにそのように、知識と行為によって最高の境地に至る。
8
केवलात्कर्मणो ज्ञानान्नहि मोक्षोऽभिजायते ।
किंतूभाभ्यां भवेन्मोक्षः साधनं तूभयं विदुः ॥ ८ ॥
行為だけからも、知識だけからも、解脱は生じない。しかし両方によって解脱が生じる。両方をその手段と知るべきである。」