『オデュッセイア』第1巻第178–205行――メントス、オデュッセウスの帰還を予言する


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メントス、オデュッセウスの帰還を予言する

178 その女神、輝く眼のアテナが彼に答えた。
179 「それなら、私はこれをまことに率直に話そう。
180 私は、賢明なアンキアロスの子、
181 櫂を愛するタポス人たちを治めるメントスだと名乗る。
182 いま私は、船と仲間たちを連れてここへ来た。
183 暗い葡萄酒色の海を航き、ことばの異なる人々のもとへ、
184 テメセへ銅を求めに向かうところだ。輝く鉄を携えている。
185 私の船は、市から離れた野に停泊している、
186 森の茂るネイオン山の下、レイトロンの港に。
187 私たちは父祖の代から、互いに客人の友だと名乗り合っている。
188 老英雄ラエルテスのもとへ行って、尋ねてみればよい。
189 彼はもう町へは行かないと、人々は言う。
190 遠く田園で苦労を味わっているとも。
191 老女を伴い、その女が食べ物と飲み物を差し出す、
192 手足に疲れが押し寄せたとき、
193 葡萄畑の丘を這うように進む彼に。
194 さて、私はいま来た。そなたの父が故郷にいると、
195 人々が言っていたからだ。だが、神々が彼の道を妨げている。
196 神にも似たオデュッセウスは、地上で死んだのではない。
197 いまもどこか生きているが、広い海に引き留められている、
198 海に囲まれた島で。荒々しい者たちが彼を捕らえている、
199 野蛮な者たちが、望まぬ彼をそこに押しとどめている。
200 だが今、私はそなたに予言しよう――胸の内で、
201 不死の神々が告げること、実現すると私が思うことを。
202 私は予言者でもなく、鳥の兆しを明らかに知る者でもないが。
203 彼は、愛する故国からもう長く離れてはいないだろう。
204 たとえ鉄の鎖につながれていても。
205 彼は帰る方法を考え出すだろう。機略に富む人だから。」

平易な日本語

アテナはメントスと名乗り、銅を求めて旅をしていると話す。オデュッセウスは死んだのではなく、島で荒々しい人々に捕らえられているが、機略を使ってまもなく帰ってくるだろうと予言する。

訳注

  • アンキアロス — メントスが自分の父として名乗る人物。
  • タポス人 — イタケ近隣の民。メントスは彼らを治める者だと自己紹介する。
  • テメセ — メントスが銅を求めて向かう先として挙げる地名。
  • レイトロン — イタケの町から離れた場所にある港として語られる。
  • ネイオン山 — レイトロンの港のそばにある、森に覆われた山。
  • 客人の友 — 父祖の代から続く、互いにもてなし合う親しい関係。メントスはこの縁を根拠に、ラエルテスへ尋ねるようテレマコスに勧める。
  • ラエルテス — オデュッセウスの父。人里を離れて田園で暮らしていると、メントスは語る。
  • 鳥の兆し — 鳥の飛び方などから神意を読む占いのしるし。アテナは予言しながら、自分はそれを明確に読む予言者ではないと述べる。
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