酒を飲んでいると、十二人の舞姫が来て、どの曲を演じるのか尋ねた。警幻は「新作の『紅楼夢』十二曲を演じなさい」と言った。舞姫たちは返事をし、檀板を軽く打ち、銀の箏を奏でながら歌い始めた。
「天地が開けた太初……」
一節歌ったところで、警幻が言った。「この曲は、俗世で作られる芝居の曲とは違います。生・旦・浄・末などの決まりも、南北九宮の制約もありません。一人を詠嘆することもあれば、一つの出来事を思うこともあります。ふと曲ができれば、そのまま管弦に合わせて譜にできます。その道に通じていなければ、よさはわかりません。あなたもこの調べをよくわかっているとは限らないでしょう。先に原稿を読んでから曲を聴かないと、かえって味気なくなります。」
そう言うと、振り返って小間使いに『紅楼夢』の原稿を取ってくるよう命じ、宝玉に渡した。宝玉は受け取り、文字を目で追いながら歌に耳を傾けた。
(紅楼夢の序曲)
天地が開けた太初、誰が情の人となるのか。すべては風月の情が深いから。
どうにもならない天、心を痛める日、寂しい時には、試みに胸の内を歌にしてみよう。
だからこそ、金を悲しみ玉を悼むこの『紅楼夢』を演じるのだ。
(終身悞)
金と玉の縁だと皆は言う。でも、思いは木と石の前の誓いだけに向かう。むなしく向かい合うのは、山中の高士、晶瑩の雪。世の外の仙姫、寂寞の林は、いつまでも忘れられない。人の世では、よいことの中にも足りないものがある。今になって、それが分かった。眉を並べて膳を掲げるほど仲むつまじくても、心のもやもやは晴れない。
(枉凝眉)
一人は仙界の花、もう一人は傷のない美しい玉。縁がないなら、どうして今の人生で出会ったのだろう。縁があるなら、心に思うことはなぜ最後にはむなしい言葉になるのだろう。一人はむなしく嘆き、もう一人は思い続けて苦しむ。一人は水に映った月、もう一人は鏡の中の花。涙には限りがある。秋から冬、春から夏へ流れるのに、どうして耐えられるだろう。
宝玉はこの歌を聴いても、とりとめがなく、よさはよく分からなかった。ただ歌の調べは悲しくやるせなく、魂をとらえてうっとりさせるほどだった。宝玉は歌のいきさつを尋ねず、来歴も調べず、ひとまずそれで気を紛らわせた。そしてさらに下を見て、こう書かれているのを読んだ。
| 訳文中の語句 | 訳注 |
|---|---|
| 十二曲 | 原文では「十二支」。ここでは演じられる十二の歌を指す。 |
| 檀板 | 打って拍子を取る板状の楽器。 |
| 銀の箏 | 箏を銀になぞらえた表現。楽器の材質を断定していない。 |
| 生・旦・浄・末 | 伝統劇における役柄の区分。個々の役の内容は本文で補っていない。 |
| 南北九宮の制約 | 原文の表現を保ち、音楽・曲種上の詳しい分類は特定していない。 |
| 試みに胸の内を歌にしてみよう | 「愚衷」にあたる謙遜表現を平易にした。 |
| 金を悲しみ玉を悼む | 原文の語句を保ち、具体的な人物への当てはめは加えていない。 |
| 金と玉の縁 | 原文の「金玉良緣」。歌詞の言い回しを保ち、人物の対応は説明していない。 |
| 木と石の前の誓い | 原文の「木石前𥂀」。字形・読みの確定を避け、歌詞の表現を保った。 |
| 山中の高士、晶瑩の雪 | 原文の「山中高士晶營雪」。人物への対応は特定していない。 |
| 世の外の仙姫、寂寞の林 | 原文の「世外仙姝寂寞林」。人物への対応は特定していない。 |
| 眉を並べて膳を掲げる | 原文の「齊眉舉案」。仲むつまじさを示す表現。 |
| 仙界の花 | 原文の「閬苑仙葩」。仙境の花という表現。 |
| 傷のない美しい玉 | 原文の「美玉無瑕」。字義に沿った表現。 |
| 思い続けて苦しむ | 原文の「空勞牽掛」。対象を補わず、思いが続く様子を表した。 |
| 水に映った月 | 原文の「水中月」。歌詞の比喩。 |
| 鏡の中の花 | 原文の「鏡中花」。歌詞の比喩。 |
| 悲しくやるせなく | 原文の「凄婉」。歌の調べの印象。 |
| 魂をとらえてうっとりさせる | 原文の「鎖魂醉魄」。曲を聴いた印象を表す。 |