『マーリンの生涯』――冬の嘆きと宮廷への帰還


だが冬が訪れ、草も、木々の実も、ことごとく奪い去ってしまうと、マーリンには口にできるものが何もなくなった。
そこで彼は、哀れを誘う声で、こんな嘆きを溢れさせた。

「天の神キリストよ、私はどうすればよいのか。
この地上のどこに身を置けばよいのか。
食べられるものは何ひとつ見当たらない。
地には草もなく、木にはドングリもない。

ここには、実を結ぶ十九本のリンゴの木が立っていた。
それが今はない。
では誰が、誰が私から盗んだのか。
どこへ突然、消えてしまったのか。
今は見えるかと思えば、今はもう見えない。
運命はこうして相争いながら、見せることを許し、また禁じることで、同時に一致している。

訳文中の語句訳注
十九本のリンゴの木原文の tres quater et juges septenæ は、十二と七を組み合わせて十九本を表す数え方。冬に葉と実を失った木々を、狂気のなかにあるマーリンは「盗まれた」「消えた」と嘆いている。

今はリンゴが、今はほかのものが、次々と私の前からなくなる。
森は葉もなく、実もなく立っている。
私はそのどちらにも苦しめられる。
葉で身を覆うことも、実を食べることもできないからだ。
冬がすべてを奪い、雨を降らせる南風もまた奪い去った。

もし地の奥にカブを見つけても、腹をすかせた雌豚や貪欲な猪どもが駆け寄ってきて、私が土から引き抜くカブを奪ってゆく」

「おまえ、狼よ、愛しい道連れよ。
いつも私と森の道なきところや林を巡っていたのに、今では野を横切ることさえ、ほとんどできない。
ひどい飢えが、おまえも私も衰えさせてしまった。

おまえは私より前からこの森に住み、年月も私より先におまえを白髪へと導いた。
だが口に入れるものを持たず、何を入れればよいのかも分からない。
それが私には不思議なのだ。
この森には、おまえが捕らえられるノロジカや、ほかの獣があれほどいるのだから。

もしや、忌まわしいその老いが、おまえから力を奪い、走ることもできなくしてしまったのか。
おまえに残されたのは、ただ遠吠えで大気を満たすことだけ。
仰向けに地へ伏し、疲れ果てた手足を投げ出している」

マーリンが茂みと密生するハシバミの間で、このように歌っていると、その声が、通りかかった一人の旅人に届いた。
旅人は話し声が大気へ流れ出てきた方へ道を向け、その場所を見つけ、話している男を見つけた。

マーリンは旅人を見ると逃げ出し、旅人はあとを追った。
しかし、そのように逃げ去る男を引き留めることはできなかった。
そこで旅人は、もと来た道へ戻り、男が逃げた出来事に心を動かされながらも、初めの目的を変えずに進んだ。

すると旅人の前に、別の男が現れた。
カンブリ人の王ロダルクスの宮廷から来た者だった。
ロダルクスはガニエダを妻に迎え、美しい妃に恵まれていた。
ガニエダはマーリンの妹で、兄の身に起きたことを嘆き、兄を連れ戻させるため、従者たちを森や遠く離れた野へ送り出していた。

訳文中の語句訳注
ガニエダマーリンの妹で、カンブリ人の王ロダルクスの妃。森へ去った兄を連れ戻すために従者たちを送り、兄の不在をグエンドロエナとともに嘆く。

その一人が旅人の方へ向かい、旅人もまた彼の方へ向かっていたので、二人はすぐに出会い、言葉を交わした。
マーリンを捜すために遣わされた男が、森か林でマーリンを見なかったか、と旅人に尋ねた。

旅人は、カレドンの森の藪深い林で、そのような男を見たと答えた。
話しかけて一緒に座ろうとしたが、男は木々の間をすばやく駆けて逃げてしまった、と。

訳文中の語句訳注
カレドンの森ブリテン北部に広がるとされた森。ラテン語では nemus Calidonis。荒野のマーリンにまつわる伝承の主要な舞台で、この作品ではマーリンが人里を離れて暮らす森として描かれる。

そう告げられると、使者は立ち去って森の奥へ入り、深い谷を探り、高い山々を越えた。
薄暗い場所を歩き、いたるところで男を捜した。

ある山の頂に泉があり、四方をハシバミと密生する茂みに囲まれていた。
マーリンはそこに座り、あたり一面の森と、獣たちが駆け戯れるさまを見渡していた。

使者は山を登り、男を捜しながら、険しい道を足音もなく進んだ。
そしてついに泉とマーリンを見つけた。
マーリンは向こうの草の上に座り、こんな言葉で嘆いていた。

「ああ、万物を治めるお方よ。
どうして四つに分けられた季節は、みな同じではないのですか。
春はその権利によって花と葉をもたらし、夏は穀物を、秋は熟した果実を与える。
そのあとを凍てつく冬が追い、ほかのすべてを貪り、荒らし、雨と雪を運び戻し、嵐で一つひとつを阻み、傷つける。
大地が色とりどりの花を生むことも、樫がドングリを、リンゴの木がザクロを実らせることも許さない。

ああ、冬も白い霜もなければよいのに。
春か夏であればよいのに。
カッコウが歌いながら戻り、敬虔な歌で悲しい心を和らげるナイチンゲールや、貞節の契りを守るキジバトも戻ればよいのに。

新しい葉の間では、ほかの鳥たちも声を合わせて歌い、その調べで私を慰めてくれるだろう。
大地は緑の草の下から、新しい花の新しい香りを放ち、泉はかすかな音を立てて流れ、その傍らでは鳩が葉陰で眠りを誘う声を上げ、まどろみを呼び起こしてくれるだろうに」

使者は予言者の声を聞くと、みずから携えてきた竪琴の調べでその嘆きを断ち切った。
そうして狂える者の気をそらし、心を和らげようとしたのである。
そこで指を動かして、嘆くような弦を順に鳴らし、背後に身を隠したまま、声を落としてこう歌った。

「ああ、悲しむグエンドロエナの、痛ましい呻きよ。

ああ、涙に暮れるグエンドロエナの、哀れな涙よ。
死なんばかりの、哀れなグエンドロエナが痛ましい。
ウェールズに、彼女より美しい女はいなかった。
その白さは女神たちにも、イボタの葉にも、春に咲く薔薇にも、野に香る百合にも勝っていた。
春の栄光は、ただ彼女のうちに輝いていた。
二つの瞳には星のような美しさを宿し、見事な髪は黄金の輝きを放っていた。

訳文中の語句訳注
グエンドロエナマーリンの妻。使者は、夫の生死も居場所も分からず衰え果てている、と彼女の悲しみを歌い、マーリンの記憶と正気を呼び戻そうとする。

そのすべてが失われた。
彼女の美しさはことごとく失われ、血色も顔立ちも、雪のような肌の誉れも消えた。
幾重もの悲しみに責め立てられ、もはや昔の彼女ではない。
夫がどこへ行ったのか、生きているのか、それとも死んだのかを知らないからだ。
そのため哀れにも衰え、長い悲しみに溶かされて、すっかりやつれている。

ガニエダも同じほどの嘆きで彼女とともに泣き、失った兄を、慰めもなく悲しんでいる。
こちらは兄を、あちらは夫を哭き、二人はともに涙へ身を委ね、悲しい時を過ごしている。
夜、茂みの下をさまよう二人を、食べ物も眠りも慰めはしない。
それほどの悲しみが、二人を締めつけているのだ。

シドンのディドも、アエネアスが船の綱を解き、急いで立ち去ろうとしたとき、これに劣らず嘆いた。
デーモポーンが約束の時になっても帰らなかったとき、哀れなピュリスも、このように呻き、泣いた。
ブリセイスもまた、不在のアキレウスをこのように嘆いた。
こうして妹と妻は、ともに声を上げて嘆き、絶えず悲しみながら、胸の奥底の苦しみに焼かれている」

訳文中の語句訳注
シドンのディドローマ詩に描かれるカルタゴの女王ディド。トロイアの英雄アエネアスが船出して去ろうとしたときの悲嘆が、グエンドロエナとガニエダの嘆きに重ねられる。「シドンの」は、フェニキアの都市シドンに結びつく出自を示す呼び名。
デーモポーンギリシア神話の英雄。帰還の約束を果たさなかったため、待ち続けたピュリスは絶望した。ここでは、不在の相手を待つ女の悲嘆の例として挙げられる。
ブリセイス『イリアス』でアキレウスと深く関わる女性。中世の詩では、ここに見られるように、離れたアキレウスを嘆く女性の例としても語られた。

使者は嘆く弦に合わせてこのように歌い、その調べで予言者の耳を慰め、心を和らげて、歌う者とともに喜ばせようとした。

予言者はすぐに立ち上がり、陽気な言葉で若者に話しかけた。
そして、もう一度指で弦を動かし、先ほどの哀歌を奏でてほしいと頼んだ。
若者は竪琴へ指を添え、求められた歌をもう一度よみがえらせた。
調べによって男を捉え、竪琴の甘美さで、狂気を少しずつ手放させていった。

こうしてマーリンは自分を思い出し、かつての自分を思い起こした。
そして自らの狂気に驚き、それを憎んだ。
以前の心が戻り、正気も彼のうちに戻った。
理性を取り戻すと、妹と妻の名に胸を動かされ、呻いた。
そしてロダルクス王の宮廷へ連れていってほしいと頼んだ。

使者はその願いに従った。
二人はすぐに森を離れ、喜びながら、ともに王の都へ入った。
王妃は兄が戻ったことを喜び、妻は夫が帰ったことを喜んだ。
二人は競うように何度も口づけし、男の首へ腕を回した。
それほど深い愛情に動かされていたのである。
王も帰還したマーリンをふさわしい礼をもって迎え、宮廷の者たちもみな迎えた。
都では諸侯たちが喜んだ。

[ 日本語 ]