バシュギルドの人々のもとで
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私たちは、トルコ人の一集団で、バシュギルドと呼ばれる人々の国に入った。彼らにはこの上なく用心した。トルコ人の中でも最も邪悪で、最も不潔で、人を殺すことにも最もためらいがないからである。男が男に出会うと、相手の頭を割り、その頭を取って、相手はそのまま置き去りにする。
表記 訳注 最も邪悪で、最も不潔で 著者自身の評価を訳したもの。続く殺害やシラミについての叙述を含め、現代の集団全体について訳者が事実を認定したり評価したりしているのではない。
彼らはひげを剃り、シラミを食べる。一人一人、クルトゥクの縫い目をたどってシラミを探し、歯でかみつぶす。私たちと一緒にいた彼らの一人は、すでにイスラームに入り、私たちに仕えていた。私は、その男が自分の服にシラミを見つけ、爪でつぶして、それからなめるのを見た。男は私に気づくと、「いいものだ」と言った。
表記 訳注 いいものだ この発言は、原文の字形が不明瞭な箇所について採用刊本が提案する読み جيدに従った。写本の語句が確定しているという意味ではない。
彼らは一人一人、陰茎ほどの大きさに木を削り、それを身につけてぶら下げている。旅に出ようとするときや、敵と戦おうとするときには、それに口づけしてひれ伏し、「わが主よ、私にこれこれのことをしてください」と言う。
表記 訳注 陰茎ほどの大きさ 採用刊本の على قدر الإحليلに従った訳。木製の品を身につけ、旅や戦いに際して拝むという、著者が伝える叙述を省かず残した。続く創造についての答えも登場人物の発言である。
私は通訳に言った。「誰かに尋ねてください。こうするのには、どんな理由があるのですか。なぜそれを自分の主にしたのですか」。答えはこうだった。「私がこれと同じものから生まれて来たからだ。自分を創ったものは、ほかには知らない」。
彼らの中には、自分たちには十二の主がいると言う者もいる。冬には冬の主、夏には夏の主、雨には雨の主、風には風の主、木には木の主、人間には人間の主、家畜には家畜の主、水には水の主、夜には夜の主、昼には昼の主、死には死の主、大地には大地の主がいるという。
表記 訳注 十二の主 採用刊本は、伝わる本文で不足する列挙を後代の引用資料に基づいて補っている。訳文では刊本が提示する十二項目をすべて残したが、写本がこのまま欠けずに伝わるという意味ではない。
天にいる主は、その中で最も偉大だという。ただし、ほかの主たちと合意のもとに集まり、それぞれが仲間のすることを受け入れるのだという。神は、不義をなす者たちの言葉をはるかに超えて、高くあられる。
表記 訳注 神は、不義をなす者たちの言葉をはるかに超えて、高くあられる 直前に紹介した信仰について、著者自身が述べる宗教的な言葉。訳者による他宗教への評価を付け加えたものではない。
私たちは、ヘビを拝む一団、魚を拝む一団、ツルを拝む一団を見た。彼らは私に次のように話した。かつて敵の一団と戦い、敵に打ち破られたことがあった。ところが、ツルが敵の背後で鳴いた。すると敵は、彼らを打ち破った後でありながら、恐れおののいて逃げ出した。そこで彼らはツルを拝むようになり、「これは我々の主だ。これはその働きなのだ。我々の敵を打ち破ったのだ」と言った。彼らがツルを拝むのは、そのためである。
表記 訳注 ツルが敵の背後で鳴いた 戦いの話は土地の人々が著者に伝えたもの。代名詞の指示先は、末尾の「我々の敵を打ち破った」という説明に沿って、初めに勝っていた敵が鳴き声で逃げた、と読んだ。著者自身が戦いを目撃したという叙述ではない。 これは我々の主だ 採用刊本が後代の引用資料に基づいて補った句を含む。訳文は刊本本文に従うが、写本の完全伝存とは区別する。
イブン・ファドラーンは述べた。「私たちは彼らの国を進み、ジルミシャーン川を渡った。それからウーラン川、ウールム川、バーイナーフ川、ワティーグ川、ニヤースナ川、ジャーウシーズ川を渡った。前にも述べたように、川から次の川までは二日、三日、四日とかかり、それより短いことも、長いこともあった」。
表記 訳注 ジルミシャーン川 ここからの七河川名は、採用刊本の表記を音写した。ウーラン、ウールム、バーイナーフ、ワティーグ、ニヤースナ、ジャーウシーズを含め、読みと現代の河川への同定は暫定。