トルコ人の国にて
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私たちは、ヒジュラ暦三百九年ズー・アル=カアダ月二日の月曜日に、ジュルジャーニーヤを出発した。そして、ザムジャーンというリバートに泊まった。そこがトルコ人の国への入口である。
表記 訳注 ズー・アル=カアダ月 イスラームの太陰暦の第11月。本文の日付はこの暦のまま示した。
翌日また出発し、ジートという宿営地に着いた。そこで雪に見舞われ、ラクダは膝まで雪に埋まって進むほどだった。私たちはこの宿営地に二日間とどまった。
表記 訳注 ジート 採用刊本の地名の読みを音写した。写本の文字には別の読みがあり、地名の同定は未確定。
それから、何ものにも足を止めず、トルコ人の国の奥へと進んだ。人には一人も会わず、山一つない荒涼とした原野を十日間進んだ。私たちは苦難と疲労、厳しい寒さ、降りやまない雪に苦しめられた。そこに比べれば、ホラズムの寒さは夏の日のようだった。これまで身に起きたことなど、すべて忘れてしまった。私たちは命を落とす寸前にまで追い込まれた。
ある日、とりわけ厳しい寒さに襲われた。タキーンが私と並んで進んでおり、その脇では、一人のトルコ人がトルコ語で彼に話しかけていた。タキーンは笑って言った。
「このトルコ人が何と言っているか、わかりますか。『我々の主は、我々に何をお望みなのだろう。この寒さで我々を殺そうとなさっている。何をお望みかわかるなら、そのとおりに神に差し出すのに』と言っているのです。」
私はタキーンに言った。
「その人に、こう伝えてください。『神は、あなた方が「神のほかに神はない」と言うことをお望みなのです。』」
表記 訳注 神のほかに神はない ここでは旅中の会話の中で述べられる信仰の言葉。トルコ人の問い、タキーンの通訳、著者の返答を区別して読む。
その男は笑い、「わかっていたなら、そうしただろうに」と言った。
その後、ターグの薪がたいそうたくさんある場所に着き、そこに泊まった。隊商の人々は火をおこして体を温め、服を脱いで広げた。
私たちは再び出発した。毎晩、真夜中から午後の礼拝の時刻まで、あるいは正午まで、できる限り激しく、力いっぱい進み、それから宿営した。
表記 訳注 午後の礼拝の時刻 原文はアスルの時刻を挙げ、それに続けて「あるいは正午まで」と記す。二つの時刻を一つに統一せず残した。
こうして十五夜にわたって進み、石の多い大きな山に着いた。そこには泉があり、水が山を流れ下り、くぼみにたまっていた。
表記 訳注 水が山を流れ下り、くぼみにたまっていた この一文は原資料の読みが不明瞭で、採用刊本も文字の補いを含む。刊本の読みに沿った訳であり、写本の語句がすべて確定しているという意味ではない。