『ヴォルガ・ブルガール旅行記(リサーラ)』――ブハーラーにて


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ブハーラーにて

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それからバイカンドへ出発し、次にブハーラーへ入った。私たちはジャイハーニーを訪ねた。ホラーサーンの首長の書記官で、その地方では「シャイフ・アル=アミード」と呼ばれる人である。彼は私たちのために家を用意するよう指示し、必要な用事を済ませ、望むことは何でも不自由なくできるよう、世話をする者を付けてくれた。そこで、私たちは数日滞在した。

表記 訳注
シャイフ・アル=アミード ジャイハーニーの呼称として本文に記される敬称。ここではアラビア語の形を残した。

次に彼は、ナスル・ブン・アフマドへの面会の許しを得てくれた。私たちが訪ねると、ナスルはまだ顎ひげも生えていない少年だった。私たちは首長に対する挨拶をし、彼に勧められて座った。彼が最初に私たちへ尋ねたのは、こういうことだった。

「わが主君、信徒の長のご様子はいかがでしたか。神が、ご自身と若い従者の方々、ご側近の方々を健やかに守り、その命を長らえさせてくださいますように。」

私たちが「お健やかでした」と答えると、彼は「神がいっそうの幸いをお与えくださいますように」と言った。

続いて、アルサフシュミーサインを、イブン・アル=フラートの代理人であるキリスト教徒アル=ファドル・ブン・ムーサーから受け取り、アフマド・ブン・ムーサー・アル=フワーリズミーへ引き渡すよう命じる書状が、彼の前で読み上げられた。私たちを送り出すようにとの命令も読まれた。また、ホラズムにいる彼の代官へ、私たちの荷物を差し止めないよう命じる書状と、トルコ人の国の入口まで私たちを護衛し、荷物を通すよう命じる書状も読まれた。

彼は「アフマド・ブン・ムーサーはどこにいるのか」と尋ねた。

私たちは「平安の都に残してきました。私たちの出発から五日後に、こちらへ向かうはずでした」と答えた。

彼は言った。

「わが主君、信徒の長のお命じになったこと、承り、従います。神がそのお命を長らえさせてくださいますように。」

イブン・ファドラーンは続ける。

この知らせは、イブン・アル=フラートの代理人であるキリスト教徒アル=ファドル・ブン・ムーサーに届いた。彼はアフマド・ブン・ムーサーに対して策を巡らせた。ホラーサーン街道のサラフスからバイカンドまで、治安を受け持つ役人たちへ、次のように書き送ったのである。

「宿屋や関所に見張りを置き、アフマド・ブン・ムーサー・アル=フワーリズミーを捜せ。その容貌と特徴はこのとおりである。見つけた者は、私たちの書状で改めて指示が届くまで、彼を留め置くように。」

こうして、アフマドはマルウで捕らえられ、拘禁された。

私たちはブハーラーに二十八日間滞在した。アル=ファドル・ブン・ムーサーはさらに、私たちの仲間のアブドゥッラー・ブン・バーシュトゥーやほかの者たちとも示し合わせた。彼らはこう言った。

「ここにとどまっていては冬になり、入国する時機を逃してしまう。アフマド・ブン・ムーサーも、こちらに着けば私たちの後を追って来られる。」

彼はまた、こう述べた。

ブハーラーでは、いろいろな種類のディルハム貨を見た。その一つはギトリーフィーヤと呼ばれる貨幣で、銅や真鍮、黄銅でできている。重さを量らずに枚数で受け取り、その百枚が銀の一ディルハムに相当する。彼らが女性の婚資の条件を決めるときには、「某の息子某が、某の娘某と、何千ギトリーフィーヤ・ディルハムという額で結婚した」と言う。

表記 訳注
ディルハム貨 貨幣の名称。本文は銀貨と銅系の貨幣を区別しており、すべてが同じ材質や価値であるという意味ではない。
婚資 婚姻の際に定める、妻に対する財産上の給付。
真鍮、黄銅 原文は銅に加えて二つの素材名 شبه、صفر を並べる。近い意味の語だが、列挙を一つにまとめず残した。

不動産や奴隷を買うときにも同じで、ほかのディルハム貨は挙げない。

これとは別に、黄銅だけでできたディルハム貨もある。その四十枚が一ダーニクに相当する。また、サマルカンディーヤと呼ぶ黄銅のディルハム貨もあり、こちらは六枚が一ダーニクに相当する。

表記 訳注
四十枚が一ダーニク 採用刊本の本文にある比率をそのまま訳した。写本の読みには疑義があるため、この数値から換算表を確定しない。ダーニクは小額の貨幣・重量単位を表す語。
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