神は人格なのか、非人格なのか
宗教比較では、神を人格的か非人格的かに分けることが多いです。しかし「人格」という日本語も曖昧です。
人間的な性格を持ち、気分が変わり、好き嫌いがあり、他の神々と争う神も人格的です。愛、知、意志、応答性を完全な仕方で持つ最高神も人格的と呼ばれる。さらに「超人格的」という言葉を使い、人間の人格を欠くのではなく、人間的制限を超える仕方で知と愛を持つと説明する神学もあります。
これに対して非人格的とは、神や根本原理を「こちらの祈りを聞く一人の相手」としては考えないことを指します。冷たい物質だという意味ではありません。見る対象ではなく、見ることを可能にする意識そのものを「純粋意識」と呼ぶ思想もあります。また仏教には、すべてのものには他から独立して変わらない本体がある、という見方を退ける「空」や「無自性」の考えがあります。無自性とは、固定した自前の本体を持たないという意味です。物事が単独ではなく、条件と関係によって成り立つことは「縁起」と呼ばれる。
| 型 | 神・究極者の特徴 | 誤解しやすい点 |
|---|---|---|
| 人間類似的な神格 | 感情、欲望、争い、役割、物語を持つ | 不完全だから宗教的価値がないとは限らない |
| 最高人格神 | 完全な知・意志・愛を持ち、人間の祈りと信頼へ応答する | 人間の人格を巨大化しただけとは限らない |
| 超人格的究極 | 人格を含むが、人間的カテゴリーを超えるとされる | 非人格と人格の単純な中間ではない |
| 非人格的絶対者 | 属性・形・意志を超える究極実在 | 無感情な物質や空虚な無と同じではない |
| 純粋意識 | 対象化できない見る原理・意識そのもの | 個人の思考する心と同じではない |
| 空・無自性 | 固定的実体の欠如と縁起 | 一つの宇宙精神ではない |
「人格神より非人格的絶対者の方が高い」と決めることもできません。神への愛、祈り、帰依を重んじる立場から見れば、知り、愛し、応答する完全者は、性質を削ぎ落とした抽象物より豊かです。この神への愛と帰依は、インドでは bhakti(バクティ)と呼ばれます。後に扱うインドの思想家ラーマーヌジャも、究極の神を、性質をまったく持たない実体として理解することへ批判を向けました。
逆に、神と本当の自己を根本では二つとしない立場から見れば、知る者と知られるもの、愛する者と愛される者という区別も、究極的なものではありません。このように二つとしない立場を「非二元」と呼びます。両者は同じ頂上へ別の道で登るというより、頂上の意味自体を異なって捉えています。
この違いは、「人が神になる」の意味を変える。
人格的最高神を中心とする伝統
人は神を知り、愛し、仕え、神から与えられる恵みによって近づく
非人格的な非二元を中心とする伝統
真の自己と究極実在が二つでなかったと知る
前者で個人性は関係の条件として残りやすい。後者では、独立した個我という理解そのものが問い直されます。
神は世界の外にいるのか、内にいるのか
次の比較軸は、transcendence(超越)と immanence(内在)です。
超越とは、神が世界の一部に還元されず、世界を超えることを指します。内在とは、神が世界と人間に臨在し、働き、世界が神から切り離されていないことを指します。
この二つも単純な反対ではありません。多くの宗教は両方を語ります。
神と宇宙を同じものと見る方向は pantheism(汎神論)と呼ばれる。世界は神の内にあるが、神は世界だけに尽くされず、それを超えるとも考える方向は panentheism(万有内在神論)と呼ばれる。どちらも西洋で整えられた分類語なので、他文化の思想へ当てはめるときには注意が必要です。
| 配置 | 概要 | 例として比較できるもの |
|---|---|---|
| 強い超越 | 神は造られた世界と本質的に異なる | 神と世界の違いを強く保つ一神教的理解 |
| 超越+内在 | 神は世界を超えつつ、世界にも働く | 世界の造り主であると同時に、世界に臨在する神 |
| 世界への内在 | 神的なものが自然・人間・宇宙に宿る | 人間の内なる神らしさ、自然に宿る神霊 |
| 万有内在 | 世界は神の内にあるが、神は世界を超える | 世界を神に包まれたものとする理解 |
| 根本的な非二元 | 世界と究極実在を独立した二つとしない | 真の自己と存在の根本を二つとしない理解 |
後に扱うインド思想や大本にも、これらの分類と比較できる考えがあります。しかし、それぞれ独自の、教えの根拠となる文書、礼拝、世界観を持つため、西洋の分類語をそのまま正式名称のように貼り付けてはいけない。このように宗教共同体が権威ある文書として扱うものを、後に「聖典」と呼びます。
「神が私の中にいる」も、少なくとも次の意味へ分かれます。
- 神が創造者として私の存在を保ち、臨在します。
- 聖霊や神霊が私の内に働きます。
- 私は神の像、子、分心、部分、様態です。
- 真の自己と絶対者は非二元です。
- 私の心に、神を表す深い象徴が現れます。
- 私の直感と欲望が神の声です。
最初の五つから六つ目は自動的に出ません。神が人の内に働くことは、日常の人格からなる「私」が決して間違わないことを意味しません。