AI倫理と信教の自由 共同体の知恵の継承 — 2026年10月号

2026-11-08 記
トピック: AI記事: スピリチュアル: ニュース

2026年10月号

AIに宗教的な問いを投げかけるとき、人の判断はどこに残るのでしょうか。異なる信仰を持つ人が同じ土地で暮らすには、何が必要なのでしょうか。そして、土地や祖先についての知識は、誰が、どんな言葉で次の世代へ渡せるのでしょうか。

10月の動きには、信仰を個人の心の中だけに置いては捉えられない問いが並びました。カザフスタンの宗教間会合ではAI倫理や気候変動が議題となり、ケニアでは信教の自由をめぐって教育や暮らしの課題が話し合われました。コロンビアでは共同体自身の教育についての集まりが報告されています。

今号は、こうした社会に向けた取り組みから、田畑の知識、家族で学ぶ場、静かに自分の人生を振り返る時間へとたどります。10月に行われた会合や発表を軸に、今年前半の制度的な動きや、これからの学びの案内も、背景として紹介します。

1.宗教の場でAIをどう使うか

2026年10月7日、カザフスタンのアスタナにある平和と調和の宮殿で、世界・伝統宗教指導者会議の事務局会合が開かれました。会合の報告によれば、20か国から宗教指導者、国際機関や政府の関係者ら30人超が参加しました。

合意されたのは、宗教分野におけるAI利用の倫理、気候変動への宗教の役割、不治の病を持つ子どもの権利に関する三つの宣言です。同報道は、2025年の会議でまとめられたアスタナ平和宣言に、これらが追加されると伝えています。

効率より先に問われる人間の尊厳

AI倫理の宣言で掲げられたのは、人間の尊厳の優先、良心の自由、人間が責任を負うこと、霊的な自律性を守ることでした。AIを使えるかどうかだけでなく、使うときに何を委ねずに残すかが問われています。

たとえば、宗教についての説明文を生成することと、ある人の信仰上の決断を引き受けることでは、求められる責任が違います。検索や文章作成を助ける道具が、人生の判断を代わりに行う権威にも見えてしまうとき、その境界は画面の便利さだけでは決まりません。

掲げられた原則を日々の使い方へ引き寄せると、誰が回答に責任を持つのか、異なる信念を持つ人の選択が尊重されるか、といった問いにつながります。宗教を扱うAIには、正しい語句を並べること以外にも、人の判断をどのように支えるかという課題があります。

AIと気候と子どものケアが同じ会合に並ぶ理由

同じ会合の気候宣言は、環境への責任、自然への配慮、未来の世代への責任を共通の価値として掲げました。子どもの権利に関する憲章は、尊厳や人道的な扱い、必要な医療・心理的支援、家族と子どもの霊的な必要にも目を向けています。

三つの主題は、それぞれ専門的な知識を必要とします。一方で、人を何のために支えるのか、弱い立場にある人の声が届くかという問いは、技術や制度の設計にも関わります。宗教間の対話が教えの違いを語るだけでなく、共に暮らす世界での責任を具体的な議題にしている点に、今回の会合の意味があります。

ただし、宣言への合意は、各国や各宗教団体で同じ規則が実施されたということではありません。大切なのは、今後どのような教育、運用、説明責任へつながるかです。文章にできた価値が、日常の判断を実際に支えるものになるかが、その先にあります。

2.信仰の自由を暮らしの条件から考える

ケニアのナイロビでは、10月5〜8日、全アフリカ教会協議会(AACC)が信教の自由と迫害を主題にしたシンポジウムを開きました。世界教会協議会(WCC)の10月15日付報告によれば、教会指導者、神学者、研究者、迫害を受けた人々ら100人超が参加しました。2019年から続くシリーズの第7回に当たります。

議論で目を引くのは、宗教をめぐる対立を、宗教の名前だけで説明しようとしていないことです。AACC事務総長のFidon Mwombekiは、宗教的迫害と呼ばれる紛争にも、経済、民族、資源をめぐる競合が根を持つと指摘しました。

自由を支える教育と生活基盤

同報告が伝える提案には、地域の権利擁護を支える教育や法的な研修、経済的支援が含まれます。紛争地域での資源管理や農業の支援、再建のための小口融資にも言及しています。祈る自由を守る仕事が、生活を立て直す仕事にも接していることがわかります。

土地や仕事を失い、安心して暮らせない状況では、信じる内容を表明できることだけで日常が戻るわけではありません。自分の権利を知り、相談できる相手がいて、生活の見通しを持てることにも意味があります。こうした支えに目を向けると、信仰の自由は、礼拝の場の外にも関わる課題になります。

これは、対立の原因を経済だけへ還元する説明でもありません。会合で語られたのは、具体的な地域の事情に沿って、守るべき権利と必要な行動を考えることでした。宗教の異なる人同士が共に生きるためには、相手への寛容という態度に加えて、それを支える生活や制度の条件が必要になるのでしょう。

地域で集まる祈りと開発の話し合い

ウガンダのBusogaでは、9月21〜27日の祈祷週間について、Busoga Consortium for Developmentが10月1日に報告しました。同組織がウガンダ宗教間協議会のBusoga部門と連携し、聖公会、カトリック、正教会、ペンテコステ派、セブンスデー・アドベンチスト、イスラムの参加を伝えています。

教育、子どもや若者、土地、家計や地域の開発も議題となりました。最終日のMayugeでの集まりは、同組織による推計で2,000人超。7日間全体の重複を除いた参加者総数ではありません。祈りの場に地域の課題を持ち寄った事例ですが、そこから生活や政策がどれだけ変わったかは、別に見ていく必要があります。

ナイロビのシンポジウムとBusogaの祈祷週間は、主催者も目的も違います。それでも、信仰に関わる集まりの中で、教育や土地、生活の立て直しが語られている点は響き合います。互いの宗教を知るだけでなく、同じ場所で生きるために何を一緒に担えるかという問いです。

出典:WCCのナイロビ会合報告、Busoga Consortium for Developmentの祈祷週間報告

3.太平洋の教会が気候問題で求めたこと

宗教が社会へ働きかける相手は、地域の学校や行政だけではありません。太平洋教会協議会(PCC)が2月27日に出した声明は、バヌアツと各国が進める、気候変動に関する国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見を受けた国連総会決議案への支持を表明していました。

声明は、気候問題を、暮らしや尊厳、未来の世代に関わる責任として語っています。女性、先住民、若者らの十分な参加や、海面上昇に直面する地域の保護なども求めました。教会の呼びかけが、国際的な意思決定へ向けられています。

支持の声明から国連総会の採択へ

5月20日、国連総会は、ICJの勧告的意見を受けた決議を141加盟国の賛成で採択しました。声明から採択までの動きは、今年前半の出来事です。

141という数は賛成国の数です。PCCの加盟教会や、その信徒の支持を測った数字ではなく、教会の声明が採択を実現したという因果関係も示しません。それでも、支持の呼びかけと、その後の国際機関の決定を並べることで、宗教団体の発言がどの制度的な課題に向けられていたかは具体的になります。

地域の祈りや自然への敬意が、国際的な議論に接続されるとき、問われるのは心構えだけではありません。意思決定の場に誰が参加し、誰の生活が守られるのか。太平洋の教会が示した関心は、その具体性にあります。

声明や決議の採択から、各国での対策や島々の暮らしの改善までには、なお実施の過程があります。アスタナでの共通の価値の表明と合わせて見ると、宗教が気候問題に関わる仕方にも、会合での合意、制度への働きかけ、地域の活動という異なる形があることがわかります。

出典:PCCの支持声明、国連総会の採決記録

4.土地の知恵を誰が次へ渡すか

共通の価値を話し合う場がある一方で、自分たちの言葉や知識を、次の世代へどう手渡すかに取り組む共同体もあります。そこでは、何を教えるかと同じくらい、誰が教育に関わり、どの土地の経験から学ぶかが大切になります。

コロンビアの共同体自身の教育

コロンビア・カウカで先住民評議会が担う二言語・異文化間教育プログラムは、10月7〜8日、地域の研修施設で教育についての集まりを開いたと報告しました。

報告の主題は、先住民自身による教育の仕組みでした。教育に関わる人々が、教育を担う当局者の助言や支えを受けながら、知識や知恵の継承に向けた進展と今後の見通しを共有したとしています。五つの先住民族とその土地における教育の過程を振り返り、意見を返し合う場でもありました。

同プログラムの説明は、教育の土台として、先住民の歴史、言語、慣習を守ること、共同体の必要や期待を踏まえて自分たちの言葉で教える人を育てることを挙げています。土地や文化に関する知識は、教材に載せる内容であると同時に、何を学ぶべきかを決める側の問題にもなっています。

外から教えを伝える人が来ることと、共同体自身が教育を考え、経過を確かめることでは、知識の受け渡し方が違います。10月の集まりで行われた対話や振り返りからは、継承が、一度話して聞かせれば終わる仕事ではないことが伝わります。教える人を支え、実践を振り返り、次の学び方を考え直す時間も必要です。

先住民の教育全体を一つの宗教教育と同一視することはできません。この報告が扱うのは、言語、知識、文化を先住民の世界観と結び付けた教育です。運営側の説明であり、教育の成果を独立して検証したものではありません。

カリマンタンで種と儀礼を守る

インドネシア・中央カリマンタンの先住民連合AMANの地域媒体は、8月22日の記事で、5月6日にAmpari Buraで行われたDayak Ma’anyan共同体の収穫を伝えています。これは10月の新しい収穫報告ではなく、土地と知識の関係を考える背景です。

記事では、在来の稲の種を選び、育て、儀礼の準備にも関わる女性たちの仕事が描かれます。Mardianaは、以前に比べて失われた種があり、残された在来種を守り続ける必要を訴えています。畑は食料を得るだけの場所ではなく、世代を越えた知識が使われ、確かめられる場所でもあります。

開墾の際には、長老や周辺の土地所有者と話し、境界を確かめ、防火帯を設け、祖先や森の存在へ許しを願う儀礼を行うと説明しています。火を扱うための具体的な手順と、祖先や土地への責任が、同じ営みの中で語られています。

ここでの土地利用を、儀礼だけが残る文化の紹介にしてしまうと、種の選び方や周囲との調整が見えなくなります。反対に、農作業の手順だけを取り出すと、誰に許しを願い、何を大切にしているかという共同体の意味が落ちてしまいます。継承される知識には、作業と関係の両方が含まれています。

記事は、開墾をめぐる不安や生活上の圧力も伝えています。これらは当事者の訴えを含む報道であり、法制度や環境への影響を独立して検証した研究ではありません。Dayak Ma’anyanのこの土地の経験を、別のDayak共同体やインドネシア全体の実践へ広げずに読むことが大切です。

出典:AMAN中央カリマンタンのAmpari Bura報告

マオリの家族で受け継ぐ学び

アオテアロア・ニュージーランドでは、Rongoā MāoriやRomiromiという、マオリの伝統的なケアと霊的実践に関わる学びの集まりが案内されています。運営側は、2023〜25年に続いて2025〜27年にも資金を得たと説明し、2026年10月2〜4日に地域の集会所で行う回などを掲載しています。

対象はTakitimu wakaに系譜を持つ家族です。子どもや若者、親、祖父母が共に関わる構成で、対面で学んだ内容を復習するアプリも説明しています。アプリの利用は参加者に限られています。誰にでも同じ情報を公開するのではなく、共同体や家族の関係の中で知識を受け渡す仕組みです。

資金や日程は運営者側の説明であり、10月の実参加人数や学習成果を示す数字ではありません。それでも、世代をまたぐ学びに、継続の資金と、学んだあとに使える道具を用意するという具体性があります。コロンビアの教育会合とは異なる取り組みですが、知恵を次へ渡すための条件を、それぞれの場所で整えようとする姿が見えます。

5.ハイチで報じられた宗教指導者の宣誓

ハイチの新聞Le Nouvellisteは10月1日、ポルトープランスの第一審裁判所で、9月30日にVodouの宗教指導者約12人が宣誓したと報じました。裁判所長官が宣誓を受け、宗教省の関係者らも同席したとしています。

記事の冒頭は、宗教的な洗礼、結婚式、葬儀を執り行う資格に関わる出来事として説明しています。この報道だけで、ハイチ全土の資格制度の範囲や運用を確定することはできません。まずは、宗教的な儀礼を担う人々と、公的な手続きとの接点を伝える小さなニュースとして受け止められます。

出典:Le Nouvelliste「Des chefs de culte vodou prêtent serment devant le tribunal de première instance de Port-au-Prince」

6.学びと静けさを生活へ戻す場所

制度や共同体の課題から、一人の人が実践のために時間を取る場へも目を向けてみましょう。リトリートは日常から一定期間離れて、瞑想や祈り、学びに向き合う滞在です。各地の案内には、何を学び、何を持ち帰ってほしいかという、場を作る側の考えが表れています。

スペインでは仏教の基礎を対面とオンラインで

スペインの仏教の学習団体は、AlicanteのPedreguerで、10月8〜12日に仏教の基礎を学ぶ集まりを案内しました。対面・オンラインの双方を設け、瞑想と講義、仏教の道へ向かう四つの観察を中心に据えています。

案内には、仏教徒であることや事前経験を参加の必須条件にしない説明と、全日程を通した参加を勧める記述があります。入口を開くことと、実践の連続性を重んじることが併存しています。開催後の報告ではないため、ここで見えるのは参加の仕組みと学習内容です。

ドイツの修道院で自分史に向き合う

ドイツのある修道院は、11月24〜29日に、注意深さの実践、音楽、詩、問いかけを使い、自分の人生の歴史をたどる企画を予定しています。長く信仰を持つ人にも、霊的なことへ関心を持つ人にも向けた案内になっています。

同じ施設は、決まったプログラムを用意せず、自分で静かな時間を組み立てる個人滞在も説明しています。学びや祈りの場にも、共に進む予定があるものと、各自で過ごし方を選ぶものがあります。これは11月以降へ向けた案内で、10月の参加実績ではありません。

悲しみを抱えたまま過ごせる時間

別の修道院では、11月13〜15日に、別れ、悲しみ、新しい始まりを主題とする集まりを予定しています。瞑想、身体に関わる実践、自然の中で過ごすこと、対話や個別の会話を含む案内です。11月14日には約10キロを歩く巡礼の日も掲載しています。

案内は、忙しい日常では向き合いにくい経験や問いのために時間を取る内容です。悲しみや自分の物語を扱う企画であり、その効果を検証した報告ではありません。

7.信じる内容とそれを支える仕事

アスタナでのAI倫理の合意、ナイロビでの信教の自由の議論、太平洋の教会による国際制度への働きかけ。大きな社会課題に向けた発信のそばには、共同体の教育を振り返る人、在来の種を守る人、家族で学ぶ場を継続する人々もいます。

それぞれが担う仕事は違います。合意を行動へつなぐには、誰が責任を持つかが問われます。知恵を受け継ぐには、教える人や学ぶ時間、自分たちの言葉と土地が必要になります。静かな滞在にも、日程を整え、対話や一人の時間を支える人がいます。

今号の取り組み 何に働きかけているか その先にある課題
アスタナの宗教間会合 AI、気候、子どもの尊厳をめぐる共通の価値 教育や具体的な運用への接続
ナイロビのシンポジウム 信教の自由と地域の生活条件 権利擁護と暮らしを支える継続的な行動
太平洋の教会の声明 国際的な気候問題への意思決定 採択後の実施と地域の暮らし
共同体の教育と土地の知識 言語、種、実践、世代をまたぐ学び 知識を受け渡す人と場所の維持
個別のリトリートや滞在 学び、自分史、悲しみに向き合う時間 それぞれの日常へ戻ったあとの実践

信仰や霊性の動向を、増えた人数や目立つ行事だけで追うと、こうした仕事は背景へ退いてしまいます。しかし、何が続き、何が次へ渡せるかは、日々の仕組みにもかかっています。

何を信じるかを大切にしながら、その信仰を持つ人が暮らせる条件にも目を向ける。知識を学ぶだけでなく、誰から、どこで、どんな関係の中で受け取るかをたどる。そこからは、今号で訪ねた地域の違いと、人を支えようとする具体的な仕事の両方が見えてきます。

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