370.そして、その思想を強くしたのが現代市場である
さらに、次の要素が、この思想を強化した。
- SNS。
- 高額セミナー。
- 成功体験。
- オンラインコミュニティ。
- インフルエンサー。
複雑な思想より、短く、希望があり、結果を約束する言葉のほうが売れる。そこで、「余計なことをしない」は、「何もしない」に変わる。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 人気や売上の大きさは、教えの効果や事実性を証明しない 人気があり売れているため、実際に効く教えだと考える
371.つまり「思想の変容」と「市場の選択」が同時に起きた
思想だけが変わったのではない。市場も、売れやすい部分を選んだ。厳しい修行、節制、共同体への責任、長期的な観察、社会運動より、「受け取るだけ」のほうが売れる。市場が、思想の中から、魅力的な部分を選択したとも言える。
372.この意味では「何もしない系」は現代消費社会の産物でもある
反消費社会的な言葉を使いながら、その形式は、非常に消費社会的である。
- 自分に合う講師を選ぶ。
- 商品を買う。
- セミナーへ行く。
- 体験を消費する。
- 次のメソッドへ移る。
つまり、反資本主義的な内容と、消費市場的な形式が共存する。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 自己変容やライフスタイルが商品化されていることと、消費社会から自由になることは別である 反消費を語る商品を買えば、消費社会の問題から自由になれると考える
373.そこに最大の皮肉がある
- 「お金に執着しなくていい」と教える。しかし受講料は高額。
- 「働かなくていい」と教える。しかし講師は熱心に働く。
- 「消費社会から自由になろう」と語る。しかし商品として販売される。
この矛盾は、偶然ではなく、現代スピリチュアルが置かれた市場環境そのものから生じているのかもしれない。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 反努力・反消費の語りを購入することが、新たな消費を生む場合がある 「何もしない」教えを消費すれば、消費や競争から解放されると考える
374.しかし矛盾があるから偽物、と単純には言えない
- 人間の文化は常に矛盾を含む。
- 反資本主義の本も市場で販売される。
- 環境活動家も車に乗る。
- ミニマリストも商品を買う。
完全な純粋性を要求すれば、ほとんど何も成立しない。だから、矛盾があること自体より、その矛盾をどのように説明しているかを見るほうが重要である。
375.問題は、矛盾を「宇宙」で隠すときにある
講師が、「私は講座を売ることで生活しています」と明示しているなら、少なくとも構造は見える。しかし、「宇宙に任せたら豊かさが来ました」だけを強調するなら、実際の収益構造が隠れる。この違いは大きい。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 宇宙という語を置いても、供給主体や因果の欠落は説明されたことにならない 説明できない部分を宇宙の采配と呼べば、矛盾は解消されたと考える
376.透明性は非常に重要である
- どこから収入が来ているか。
- どの程度の参加者に結果が出たか。
- 結果が出なかった人はいるか。
- どんな前提条件が必要か。
これらが明示されていれば、参加者は判断しやすい。
透明性が低いほど、成功物語だけが強くなる。
377.そして「誰に向けた言葉なのか」を見る必要がある
「何もしなくていい」という言葉が、誰に向けられているのかを見る必要がある。
- 過労している人に向けられているのか。
- 社会不安を抱えている人に向けられているのか。
- 高額講座を買わせるために使われているのか。
それによって意味は変わる。同じ文章でも、文脈によって評価は違う。
378.ここまでの議論で最も大事なのは、全面肯定も全面否定もしないこと
今回の話は、「スピリチュアルは間違っている」という結論を出すためではない。むしろ、どの部分が何に当たるのかを分解することが目的である。
- 宗教。
- 心理。
- 哲学。
- 環境思想。
- 経済。
- マーケティング。
分解すれば、それぞれ別々に考えられる。
379.思想として見ると面白い。法則として見ると検証が必要
最終的には、この一文で整理できる。世界観としては自由。因果法則として主張するなら証拠が必要。「宇宙に任せると心が楽になる」なら、本人の経験として成立する。「宇宙に任せれば誰でも収入が増える」なら、検証が必要になる。
380.そして経済的な約束が入った瞬間に注意が必要になる
特に、お金、退職、借金、投資、高額講座が絡む場合には、物語だけで判断しないほうがよい。なぜなら、失敗した場合の損失が、心理的なものだけではなく、現実の生活に及ぶからである。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 金銭結果を約束する段階で証拠と販売責任が必要になる 信じれば収入も保証されると期待する