306.ただし、接着された思想同士は本来かなり違う
ここで改めて注意したい。本来、次の思想はそれぞれ違う。
- 自然農の「自然が働いている」と、引き寄せの「意識が現実を引き寄せる」。
- 自己肯定の「成果がなくても価値がある」と、豊かさ思想の「価値があるからお金を受け取れる」。
- ノンデュアリティの「行為者としての自己を疑う」と、「行動しなくても願望が実現する」。
- 女性性の「受け取ることも大切」と、「男性が経済的に供給するのが自然」。
しかし、「引き寄せ」という因果法則を間に置くことで、それらを一つの世界観として語れるようになる。
307.引き寄せは「心理」から「物理」への橋になる
たとえば、「私は豊かさを受け取ってもよい」というのは心理状態である。普通なら、
心理状態が変わる → 行動が変わる → 人間関係が変わる → 結果が変わる
という経路を考える。しかし引き寄せでは、
心理状態が変わる → 波動が変わる → 宇宙が対応する → 現実が変わる
という経路を置くことができる。ここで、行動という中間項を省略できる。これこそが、「何もしなくても与えられる」を成立させるうえで決定的なのかもしれない。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 気分の変化が認知や行動へ影響することと、外界を直接変えることは別である 気分や内面が変われば、外界も行動を介さず直接変わると考える
308.行動を省略できるから「何もしない」が成立する
もし、
思考 → 行動 → 結果
なら、何もしないことはできない。しかし、
思考・波動 → 宇宙 → 結果
なら、外的な行動は不要になる。さらに、「思考することすら執着」と考えれば、
受け取ることを許可する → 宇宙に任せる → 結果
まで簡略化できる。そして最後には、
Being → Receiving
つまり、「ただ在るだけで受け取る」という思想へ到達できる。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 行動を媒介から外すことで供給の因果経路が欠落する 波動だけで結果が来ると期待する
309.ここで「存在給」とも非常に相性がよくなる
「存在しているだけで価値がある」という思想は、心理的自己肯定としては、市場価値とは無関係である。しかし引き寄せを挟めば、
存在しているだけで価値がある → 価値がある自分は受け取ってよい → 受け取りを許可する → 宇宙が豊かさを供給する
という物語になる。つまり、存在価値を経済的供給へ変換する装置として引き寄せを使える。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 存在価値と所得の発生は別の命題である 存在に価値があるなら、存在しているだけで収入も発生すると考える
310.女性性とも同じ構造で接続できる
女性性についても同じである。
女性性=受容と定義する → 女性性を開く → 受け取ることへの抵抗がなくなる → 宇宙からの豊かさを受け取れる → 男性からの愛・お金・援助も受け取れる
こうして、心理的な「受容性」と、実際の経済的供給を、引き寄せによって接続できる。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 女性性を受容性と結びつけても、外部から資源が供給される因果は生まれない 受容的な女性であれば、必要なものが与えられると考える
311.自然思想とも同じように接続できる
自然思想では、自然はすでに働いている。人間は余計な介入を減らせばよい。という発想がある。そこへ引き寄せを入れると、
自然には完全な秩序がある → 宇宙にも完全な秩序がある → 自分が余計なことをしなければ、その秩序が働く → 必要なものは自然に現れる
という物語になる。ここでも、自然農における経験的な「自然の自己組織化」が、人生全体についての宇宙的な供給法則へ拡張されている。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 生態系の自己組織化と、個人経済への供給保証は別の問題である 自然体でいれば、自然が生活資源まで満たすと考える
312.つまり引き寄せは異なる領域を「因果関係」に変える
この点をまとめると、引き寄せの役割は、単に、「願えば叶う」という思想を提供しただけではない。もっと重要なのは、本来別々だった領域の間に、見えない因果関係を設定できることだったのではないか。
自己肯定 → 経済的豊かさ
女性性 → 男性からの供給
自然との調和 → 人生の成功
手放し → 願望実現
波動 → 現実
という接続を可能にする。だから、引き寄せは、現代スピリチュアルの多様な思想を統合する非常に強力な原理になる。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 言葉の類似や連想関係は、事柄同士の因果関係を証明しない 共鳴する言葉を持つ教え同士には、実際の因果関係もあると考える
313.そして「波動」が万能の媒介変数になる
そこで重要になるのが、「波動」である。
- 心理状態。
- 身体状態。
- 感情。
- 人間関係。
- お金。
- 健康。
- 宇宙。
これらすべてを、波動という一つの言葉で接続できる。
- 気分がいい。
- → 波動が高い。
- → 高い波動の現実を引き寄せる。
- → 良い仕事・良い人・豊かさが来る。
という説明が可能になる。
波動は、心理と物質世界の間をつなぐ万能の媒介変数として機能する。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 定義も測定方法も定まらない「波動」だけでは、多様な結果の原因を検証できない 波動を上げれば、お金・健康・人間関係など全領域が好転すると考える
314.ただし「波動」は物理学の波とは別の概念である
ここでは区別が必要になる。物理学には、電磁波、音波、量子状態、振動、周波数などがある。しかしスピリチュアルで使われる、「豊かさの波動」「愛の波動」「高い波動」は、通常それらを物理的に測定しているわけではない。したがって、同じ「波」「周波数」という言葉が使われても、物理学的概念とスピリチュアルな比喩は別物として考えたほうがよい。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 スピリチュアルな「波動」と、物理量として測定される波は別の概念である 物理学の波が、願望実現の宇宙法則を証明していると考える
315.科学語彙が入ることで説得力が増す
しかし、エネルギー、波動、周波数、量子といった言葉には、科学的な響きがある。
そのため、宗教的な、「神が願いを叶える」より、「同じ周波数の現実を引き寄せる」のほうが、現代人には科学的に聞こえる場合がある。ここに、現代ニューエイジ特有の、科学語彙と宗教的世界観の混合がある。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 用語の借用だけでは仮説の測定・検証にならない 科学用語があるので客観的真理だと思う
316.「宇宙」は神、「波動」は祈り、「引き寄せ」は恩寵なのか
少し大胆に比較すると、伝統宗教における神、祈り、恩寵という構造が、現代スピリチュアルでは、宇宙、波動、引き寄せへ置き換わっているようにも見える。
ただし大きな違いがある。伝統宗教では、最終的な決定権は神にある。
現代の引き寄せでは、自分の波動によって宇宙の応答を変えられるとされることがある。だから、現代的な個人主義との相性が非常によい。
この章で生じうる解釈の乖離
論理的に確認できること 感情が先行した解釈 現代的な用語を使っても、神学的機能を持つ主張が検証済みの法則になるわけではない 「宇宙」「波動」「引き寄せ」という現代的な言葉なら、宗教ではなく客観的な法則だと考える